考察 ホンダ6V車のウインカーインジケータランプのLED 化

R&Pの製作・カスタムにあたり、各種インジケータ類をLED化したわけだが、このバイクの回路構造はウインカー部分をそのままLEDに してしまうと常にハザード状態になってしまう(理由は後述)。
インジケータを2つ使い、左右フラッシャの回路を完璧に分離してしまうことで解決できるが、オーナーの希望でインジケータはシングルが良いとのこと。 配線図を引っ張り出してきて、どうすればシングル化できるかを考えてみた。


まず、下図を見て欲しい。これはR&Pのウインカー部分の回路構造を抜き出したものである。 (今まで自分が見てきたホンダの50ccは全てこれと同じ構造をしているため、他車種でもこの方法は流用可能と思われる)。


ノーマルのウインカー部分配線図

スイッチを左に入れた場合、図の赤い矢印の方向に電流が流れていき、赤い丸の所で電流が分岐し、インジケータにも電流が 流れるようになっている。その後インジケータを通過した電流は、本来は電流を流したくない右のフラッシャーに流れ、アースに落ちる。
なぜスイッチと反対側のフラッシャに電流が流れているにも関わらず、反対側のフラッシャは点灯しないのだろうか?
このページをご覧になっているあなたは、中学校の理科で学習したオームの法則を覚えているだろうか?そう、

[A]電圧E(V)=抵抗R(Ω)×電流I(A)

というごく単純な式である。上式に付随して他に法則が存在することも思い出して欲しい。
ここで思い出して欲しい法則は、下記の3点である。

[B]並列回路にかかる電圧は一定
[C]直列回路に流れる電流は一定
[D]並列回路全体の抵抗Rは、並列な各回路のそれぞれの抵抗R1,R2,R3…から求めることができ、
  (1/R)=(1/R1)+(1/R2)+(1/R3)+…


[D]式は少しわかりにくく見えるが、わからない方は式を分数で書き直せばすぐに思い出していただけるものと思う。

さて、本題に戻ろう。反対側のリレーが点灯しない理由は、[B]および[C]の法則によるものである。
回路図を良く見て欲しい。赤い点で分岐するところまでは並列回路であるため、左側フラッシャとインジケータにそれぞれ6Vが供給されることになる。ここで注目すべきは 右側のフラッシャに入り込む流れは、インジケータ(抵抗)を介した直列回路であると言う点だ。インジケータから右側フラッシャまでの電流の流れは直流なので、 各々の抵抗値に応じて流れる電圧が変わってくるのである。簡単に説明するとインジケータランプによって電圧が消費されると考えてもらって差し支えない。 つまり右側フラッシャに流れる電圧は、電球を点灯させるに至らないほど低いから点灯しないということである。


今までの説明で理解できると思うが、インジケータ球は抵抗として作用しているため、これをLEDに変えてしまうと右側フラッシャに流れる電圧を抑えるものが なくなってしまう。単にランプのみをLED化してしまうとハザード化してしまうのはこのためである。
この現象を回避するにはどうすべきか。
最も簡単な方法として思いついたのは下図に示すようにダイオードを入れてやり、反対側に電気を流さないようにしてやる方法である。


例1 ダイオードを使用した回路例

しかし、実際にさがしてみたところ定格に見合ったダイオードは抵抗に比べて高価であることがわかった。
ダイオードを手に入れるよりも安価で、簡単な方法はないものか…などと考えていたところ非常に簡単で安価な回路を思いついた。それが下図に示す例2の回路である。


例2 抵抗を使用した回路例

ノーマルのインジケータ球を排除することでなくなってしまった抵抗を、外付けの抵抗で代用させようという狙いである。以下に具体的な抵抗値の選定例を紹介していく。

まず、ノーマルの場合に右側フラッシャに流れ込む電圧を計算する。ここで使用する式は、
消費電流(W)=電圧(V)×電流(A)
といった、これまた電気回路の基本的な式である。


1.インジケータ球の抵抗値
6V/1.7Wから、電流=1.7(W)/6.0(V)=0.28(A)、抵抗=6(V)/0.28(A)=21.4(Ω)

2.フラッシャ球の抵抗値
6V/8Wから、電流=8(W)/6(V)=1.33(A)、抵抗=6(V)/1.33(A)=4.5(Ω)
フラッシャ球は2個並列でつながっているため、並列フラッシャ球の回路全体の抵抗値は式[D]より2.3(Ω)となる。

3.インジケータと右側フラッシャをあわせた回路全体の抵抗
21.4(Ω)+2.3(Ω)=23.7(Ω)

4.回路に流れる電流
上の3.式より、6(V)/23.7(Ω)=0.253(A)となる。

法則[C]により、回路全体に流れる電流は一定であるため、インジケータに流れる電圧はオームの法則より、
0.253(A)×21.4(Ω)=5.41(V)

フラッシャに流れる電圧は
0.253(A)×2.3(Ω)=0.59(V)

フラッシャにかかる電圧はわずか0.59Vとなり、これで点灯しないのは納得である。
上の式1.に近い値を取り、かつ2.5V以上の電圧をLEDに供給するため、抵抗は左右それぞれ8Ωずつと仮定してやった場合、式は割愛させていただくが、

インジケータLEDに流れる電圧=2.63(V)
フラッシャに流れる電圧は=0.75(V)

となる。実際のところは、フラッシャに流れる電圧=1V程度でも問題なさそうである。
8Ωで実際に配線を組んでインジケータをLED化したところ問題なく動作した。最後に注意点として、この回路では抵抗を介してLEDを点灯させるため、 LEDに入る入力電圧が低下してしまう。厳密にはLEDの定格をみてLED球に直列で接続されている抵抗も変更すべきであるが、今回は電圧降下しても実際に問題なく インジケータは点灯したため、改造および説明を省略した。


最後に、あくまで回路の改造は自己責任でお願いします。使用する抵抗は定格を見て適正なものを選択してください。 わからないことなどありましたらBBSまでどうぞ。
この文章はhidewwoが中学校の理科の授業を思い出しながら記述したものなので、細かい点は間違えているかも知れません。おかしい点があったらご指摘 いただければ幸いです。長文を読んでいただきありがとうございましたm(_ _)m